ある素敵なママの日()

日曜日、珍しく夫に休みがやってきた。そうとなれば黙っているうちの子達ではない。

パパ、サッカーしよう、

ぱぁぱ、テムテム、おっぽ、

ねえパパー、アイスたべたいぃ、

ぱぁぱ、おくおく、

などなど、息子達に捕まる夫だった。

ちなみにテミンが言うおっぽとは、お散歩の事らしい。

サッカーにおさんぽに、アイスクリームにお肉かい。

やれやれ。

素敵な日曜日になりそうだ。

ふふ。

よし、出かけるか、

朝ごはんを食べた夫が相変わらず子供におねだり攻撃されている中、意を決したらしくついにそう言った。

さて、散歩か、アイスクリームか、肉の日になるか。

どこいくのー

ミンホがパパの脇や胸に滑り込む。

テミンはそんなお兄ちゃんを追いかけてパパの足からよじ登る。

アイスも食べられて、お散歩もできるところだな。

今からお弁当を作るなんて言われなくてよかった。

飲食店があるところか。

それとも昼までには帰ってくるのか。

ただし、ご飯はママが食べたいものにするからな。

なにそれ。

今更僕なの?

へんなの。

パパもアイスが食べたいから、アイスがあるところには行くけどな。

まあ飲食店の大半がアイスクリームを置いているかもしれないけどさ。

まあ、いいか。

それから僕達一家はパパの運転でドライブに出た。

休日は露店が出たりする大きな公園だ。

この季節はカップルや家族、わんちゃんのお散歩なんかでよく賑わっている。

チャイルドシートふたつが隣あって後部座席に乗っている。

ミンホとテミンは手を握りあって高い声ではしゃぎながらのドライブだった。

公園に着くとすでに多くの人達が思い思いに楽しそうに過ごしていた。

露店は粉物から飲み物、ケバブやチキンなんかも売っていていい匂いがしている。

夫の目当てのソフトクリームもアイスキャンディーもありそうだ。

み、み、み!

するとテミンが指をさして叫んだ。

その先を見てみると、なんとシウォンとキュヒョンが歩いていたのだった。

シオニせんせぇ!キュヒョニせんせぇええ!

ミンホがピョンピョンと跳ねて手を振る。

夫も二人に向かって手を振った。

新婚さんが公園デートか。

もっとお高いデートしてるかと思ったんだけどな。

ふふ。

家族サービス?

キュヒョンがユンホに話しかけた。

ユンホは頷いた。

ここで兄さん達に会えるとはね、

シウォンとユンホがハグをした。

キュヒョンは手にアイスクリームを持っていた。

オレンジとグリーンのアイスがふたつが乗っているが、何味なのか。

食べ合わせはどうなのか。

ふたりはデートだね、

僕が言うとキュヒョンはアイスを食べることに逃げたようだ。

代わりにシウォンが得意気にキュヒョンの肩を抱いた。

相変わらずだなこのふたりも。

せんせぇ、アイスおいしい?

ミンホがキュヒョンのデニムを掴んで引いた。

物欲しそうに見上げる。

こらこら、人のものにそんな目で見てはいけませんよ。

ん、あっちで売ってたから、パパとママに買ってもらいなさいな。

はいっ!

何故そこで敬礼するのか、息子よ。

じゃあね、また月曜日にね、

キュヒョンはそう言って片手でミンホとテミンの頭を撫でた。

その手でシウォンと手を繋ぎ、もう片方でアイスクリームを持ち去っていった。

なんだかんだで順調なようだ。

パパぁ、アイス!

テムテム!あっす!

おっす、みたいだな次男よ。

わかたわかた、買ってやるから、

この公園には露店以外にカフェや売店も常設されている。

そのカフェで買えるアイスクリームがなかなかに美味しいらしい。

キュヒョンもそこで買って(買わせて)食べていたのだろう。

パパに肩車をされたお兄ちゃん。

ママにだっこされている次男

僕達は人の賑わうなかを歩きカフェに向かった。

アイスクリームの販売スペースにはちょっとした列が出来ている。

店員さんがメニューを持ってきて見せてくれた。

ユンホ、どれにする?

イチゴにチョコチップ入ってるやつ、

ミノは?

バリラ

バニラね。テムはもうちょい我慢だな。

まん!あっす!

ごめんねテミン。

代わりに乳幼児用のヨーグルトを持ってきたからそれで許して。

さっきキュヒョンが食べていたオレンジ色のアイスはマンゴー味のようだ。

グリーンはメロン味だそうな。

味、混ざらないのかな。

順番がやってくる。

僕がオーダーをして夫が支払う。

ついでにコーヒーもふたつ買った。

僕達は芝生のほうへ向かった。

荷物からシートを出して敷くと、ミンホが転がるように乗り、テミンが真似して倒れ込む。

さ、溶けちゃうから食べよう、

僕の手からミンホのアイスを渡す。

夫に僕の分も持ってもらって、テミンのヨーグルトを取り出した。

さあ、食べよう。

そう思ってヨーグルトを掬ったスプーンをテミンに向けた時だった。

視界にアイスクリームが三つ、にゅっと入ってくる。

はい、あーん、

ママ、あーん、

まん、あー、

ヨーグルトもくれるのかい。

ふふ。

なに、みんなでどうしたの。

子供たちのキラキラしたおめめが僕を見上げてくる。

母の日、なんにもしてやれなくてごめん。

え?

僕は夫を見た。

子供たちも僕を見上げているままだ。

気持ちだけ、一口ずつ貰ってくれよ。

ミンホが早く食べたいだろうに、最初の一口も我慢して僕を見上げてくる。

まぁま、

テミンがどうぞって言ってくれているように、ほたほたと笑って見上げてくる。

みんな、

ああ、胸がキュンとしちゃうな。

うん、じゃあ、一口ずついただきます。

まずは夫の愛を頂く。

イチゴ味のピンク色にビターなチョコチップが入ってるアイスクリーム。

それから、真っ白なバニラアイスを一口。

濃厚で滑らかだ。

うっとりするようなシルキーな舌触り。

そしてテミンに渡し、危なっかしく持ったスプーンの上のヨーグルトを食べた。

乳幼児用特有のうっすらぼんやりした味がした。

バニラアイスの後だから、微かに酸味だけを感じた。

ふふ、

思わず笑いがこみ上げる。

ママ、おいしい?

んまいか?

まんまん、

ふふふ、

また笑ってしまったよ。

とってもとっても幸せな気持ちでいっぱいで。

カーネーションの一本もこいつらに持たせてやれなくてごめん。

ううん、いいの、この一口でじゅうぶん、ほんとだよ。

僕は子供ふたりを抱き寄せた。

ヨーグルトに目を向けるテミンと、アイスクリームを食べ始めたミンホをぎゅっと抱きしめた。

何でも食っていいから。

え?

チョコバナナもクレープも綿菓子もなんでも買ってやるから。

ええ?

全部甘い物なのは何故だろう。

カフェのケーキでもアップルパイでもティラミスでもいいから。

それは、あなたが食べたいのではないかしら。

ささやかすぎるけど、母の日だから。

何を言っているのだ。

僕は、あなたの母ではありません。

僕は、ミンホとテミンのママなんだ。

だから、じゅうぶんなんだ。

ううん、ふたりからママとして、一口ずつ貰ったから、本当にじゅうぶん。

それじゃあパパとして不満と言っている顔をしているね、ユンホ。

そうやって困らせるための母の日じゃあないんだけどな。

ふふ。

じゃあ、フライドポテトと、フライドチキン、それから、焼きそばにたこ焼き。

我ながらなんてジャンクなのかしら。

普段は肌のためにも体型キープのためにも控えている。

でも、何が好きってやっぱりジャンクで美味しいものだ。

カフェでピザとピタパンも食べたい。

来週はまた夫とふたりで撮影する仕事がある。

だから吹き出物なんか作れない。

だから、こんなには食べない。

だから、アイスクリームでじゅうぶん。

けど、

お?

まんまん、

ふふ。

じゅうぶん。

この子達からの一口で、じゅうぶん。

みんなが食べたいものでお昼ご飯ができるだけで、じゅうぶん。

おにぎりやサンドイッチもあるみたいだし。

カフェでゆっくりしてもいいし。

みんなで美味しく食べられる時間があればじゅうぶんなんだよ。

ううん、それだって贅沢なことだ。

僕にはこんなに素敵な旦那様がいて、こんなに可愛い子供たちがいるのだから。

それだけで、じゅうぶんなんだ。

じゅうぶんなの。

陽射しが眩しい。

夫の顔がかっこよくて眩しい。

子供たちのキラキラが眩しい。

眩しくて、幸せで、ママ、泣いちゃいそうだよ。

泣かないけど。

ママ、

まぁま、

チャンミン

なあに。

ありがと、だいすき。

やだもう。

ママぁ、いつもありがとうごじゃいます、

やだやだ、反則。

ちゃー、まん、あーってよー、

トドメの一撃。

はははっママ泣いちゃったヨ、よしよしよし。

もう。

このっ、ずるいメンズめ!

それから僕達は、明るい公園家族デートを楽しんだ。

もちろん、主に食べることで、ね。

ふふふ。

パパの日は、どうしてくれちゃおうかな。

ママだって、みんなのことを、あーってます。

()(6v6)(J)()

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