調停第三回目

笹木先生に続き、調停室へ入る。

調停委員の二人は、苦笑いというか困った表情をしている。

さらに、全身から落ちつかないオーラをかもし出している。

笹木先生とパイプ椅子に座る。

座った瞬間に、トオルの残り香がふっと鼻についた。

間違いなく来ているんだ。

何だか嫌な予感がする。

正面に座る二人が、手元のファイルを指差したりペンで何か印をつけながら目で会話をしていた。

左側に座っている笹木先生をチラっと横目で見やった。

さすがに笹木先生も怪訝そうな顔をして、眉間にシワがほんの少し寄っていた。

ハイミス結論から申し上げます。

右手に握っているペンを無意識にギュッと力がこもる。

さらに、喉がギュッとなった。

生唾を飲む、というやつだろうか。

ハイミス裁判官により、次回も調停続行という方針になりました。

えー!!

ハイミスの口から告げられた予想外の言葉に、私はしばらく呼吸や瞬きも忘れそうになるほど体が硬直してしまった。

ハイミスからの言葉を受け、笹木先生は相変わらず淡とした口調だけど、その言葉尻には、トオル側と裁判官の対応に不快感や不服が山盛りに盛られていた。

笹木先生と調停委員の声が、遠くで話しているように聞こえる。

だんだん聞こえにくくなる。

今回で調停不成立

婚姻費用の調停は、そのまま審判に委ねられて金額が決まる。

離婚調停は、トオル側が離婚裁判も辞さないと言っていたから、提訴してもらうのを私は待つのみ。

私も笹木先生も、完璧にこの流れを予想していた。

まさかの調停続行

そんなわけがない。

視線を落とし、机に開いてる調停用のノートの一点を見つめた。

笹木先生と調停委員の声が、私の耳からは遠ざかってしまった。

視野が段ぼやけてきた。

ボロボロ止めどなく涙が頬を伝う

また私は泣いてしまった。

二人の調停委員と、トオル側へ私は何も言えぬまま、交替の時間になった。

笹木先生と汗だくに促され、